法人が様々な理由により、事業年度を変更することは度々見受けられます。グループ間企業の事業年度を合わせるためや、解散によるものが多いと思いますが、その事業年度の変更によって翌々課税期間の消費税の計算に影響を及ぼす場合があります。
消費税の課税事業者や簡易課税の適用を判定する基準期間は基本的には前々事業年度の課税売上を用いますが、事業年度を変更した場合、1年に満たない事業年度が発生するため、変更以後の事業年度において基準期間の課税売上が単純に前々事業年度の課税売上というようにはなりません。
では、事業年度を変更したときの基準期間をどのように判断するのかを具体例を交えながら、説明したいと思います。
消費税法第2条第1項第14号に基準期間について
個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。
と、記されています。
ここで注目していただきたいのはカッコ書きの内容なのですが、例えば
第1期 | 平成29年4月1日~平成30年3月31日 |
第2期 | 平成30年4月1日~平成31年3月31日 |
第3期 | 平成31年4月1日~平成31年7月31日(期間変更) |
第4期 | 平成31年8月1日~平成32年7月31日 |
第5期 | 平成32年8月1日~平成33年7月31日 |
といった事業年度の場合の第5期の基準期間は、開始の日(平成32年8月1日)の2年前の日(平成30年8月2日)の前の日(平成30年8月1日)以後1年を経過する日(平成31年7月31日)までの間に開始した各事業年度を合わせた期間となりますので、この場合、第3期のみが基準期間の対象ということなります。

更に別の例ですと、
第1期 | 平成29年4月1日~平成30年3月31日 |
第2期 | 平成30年4月1日~平成30年7月31日(期間変更) |
第3期 | 平成30年8月1日~平成30年12月31日(期間変更) |
第4期 | 平成31年1月1日~平成31年12月31日 |
第5期 | 平成32年1月1日~平成32年12月31日 |
といった事業年度の場合の第5期の基準期間は、開始の日(平成32年1月1日)の2年前の日(平成30年1月2日)の前の日(平成30年1月1日)以後1年を経過する日(平成30年12月31日)までの間に開始した各事業年度を合わせた期間となりますので、この場合、第2期と第3期を合わせた期間が基準期間となりますので、単純に2期前のみが基準期間になるとは限りませんので注意が必要です。

また、上記のケースの場合、基準期間が1年に達していないので、課税売上高を1年分に換算して課税事業者や簡易課税適用の判定をする必要がありますので併せてご注意下さい。
ケースによっては基準期間が1年を超える場合もあります。
第1期 | 平成29年4月1日~平成30年3月31日 |
第2期 | 平成30年4月1日~平成30年8月31日(期間変更5ヶ月) |
第3期 | 平成30年9月1日~平成31年5月31日(期間変更9ヶ月) |
第4期 | 平成31年6月1日~平成31年12月31日(期間変更7ヶ月) |
第5期 | 平成32年1月1日~平成32年12月31日 |
この場合も基準期間は第2期と第3期の合算した金額になりますが合計期間が14ヶ月となりますので、1年分の課税売上高に換算する必要があります。

解散・清算時は事業年度が変更になることが多いと思いますので特にご注意ください。