今後10年間非上場株式の贈与税・相続税に対する特例を設け事業承継を促進

 中小企業経営者の平均年齢は上昇傾向にあります。60歳代半ばの経営者が多数を占め、世代交代が進んでいない状況です。このような現状を踏まえ、平成30年(2018年)の税制改正で事業承継税制が大幅に拡充されました。

平成30年改正の主なポイント

  • 総株式の最大3分の2までが対象という制限を撤廃し、経営者が保有する全株式を対象とする
  • 猶予割合は80%から100%へ緩和
  • 承継後5年間平均8割の雇用維持という要件は弾力化
  • 承継後の負担の軽減

 これまでは発行済議決権株式総数の3分の2までが納税猶予の対象でしたが、この制限が撤廃され全ての株式を対象とすることができるようになりました。また、猶予される相続税は80%で、20%は課税の対象となっていました。今回の特例では納税猶予対象株式に係る相続税の全額の納税が猶予されることになり、相続税を支払うことなく株式を引き継ぐことが可能となります。

 従来の制度ではその利用を躊躇する大きな理由の一つに、雇用の8割維持という要件がありました。これは分母となる従業員数の多少により、要件をクリアする難しさが大きく変わります。100名の事業所では20名減少しても要件を満たすことができ、また減少する可能性もあまり高くありません。ところが10名の事業所では2名程度の退職の可能性は比較的高く、少子高齢化や都市への人口集中の影響もあって新規の雇用がスムーズに出来ないような状況も想定されます。今回の特例では、この要件を満たせなかった理由を記載した書類を提出すれば納税猶予は継続されることとなりました。

10年間の時限措置

 特例は平成30年(2018年)1月1日から令和9年(2027年)12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税または相続税について適用されます。定められた期間内に所定の手続きに従い適用を受けることが必要となります。

特例承認計画書の作成と提出は5年の間に行う

 令和6年(2024年)3月31日までに特例承認計画書を都道府県に提出し認定を受けることが必要となります。特例承認計画書の提出期限と特例期間(令和9年12月31日まで)との間にずれがあり注意が必要です。
 事業承継税制に関連する情報につきましては、中小企業庁のホームページ においてもご覧いただけますので、是非ご利用ください。事業承継をお考えの方は、【大幅に拡充された改正事業承継税制のご案内】もご覧ください。