第三分野保険とは一般的に、医療保険・ガン保険・介護保険のことをいいます。

改正前の第三分野保険の経理処理

 終身保障タイプのガン保険等については平成24年(2012年)4月に個別通達が出ており、この通達の中に保険料の税務上の取扱の例外的取扱いとして、解約払戻金がない(ごく少額のものを含む)ものについては、保険料の払込期間が短期払いであっても保険料の払込の都度、損金に算入することが認められていました。
 そのため、この規定を逆手にとって、極端な短期払の医療終身保険も作られ、「高額な保険料を短期間に損金算入し、払込終了後に被保険者個人の契約に変更する」というプランを販売する保険会社も出てきました。中小企業の経営者等にとって、会社の経費になったうえに、自己負担はほとんどなく、一生涯の医療保険があるというのがかなりのメリットと感じられ、契約件数も増えていました。

大きく変わった第三分野保険・定期保険の経理処理

 令和元年(2019年)6月28日に法人税基本通達の一部改正があり、同年7月8日以降は解約返戻金のある第三分野保険・定期保険については最高解約返戻率によって、資産計上額や資産計上期間が決まるとされ、契約ごとに経理仕訳が確定することになりました。
 また、同年10月8日以降の第三分野の短期払込終身保険については、被保険者1名あたりの1事業年度あたりの払込保険料が30万円以下のものについてのみ全額損金算入と改正されました。
 そのため、解約払戻金のない(ごく少額のものは含む)保険期間が終身の第三分野保険の経理処理が複雑になります。

 短期払込とは保険料の払込期間が保険期間より短いもののことをいいます。
 保険期間や保険料払込期間が終身で解約払戻金のないタイプや、保険期間と保険料払込期間が同じで解約払戻金のないタイプは、今まで通り全額損金算入が可能です。

 30万円以下の保険料で契約すれば問題ないと思われるかもしれませんが、1事業年度1名あたりのすべての保険会社への支払総額が30万円以下ということに注意して下さい。

第三分野保険の経理処理のミスが起きそうな設例

例1) 2019年度 A保険会社
1名あたり年額30万円の短期払込医療終身保険に加入
全額損金で経理処理
例2) 2020年度 B保険会社で追加加入
1名あたり年額20万円の短期払込医療終身保険に加入
保険料が1名あたり50万円と30万円を超えたので2020年度に加入した保険だけではなく2019年度に加入した保険も2020年度からは全額損金算入ではなく一部しか損金に算入できなくなります。

 これを間違えて、2契約とも全額損金計上としたり、2019年度契約分の30万円は全額損金計上のままにしてしまう場合が考えられます。

総額で1名あたり支払保険料年額30万円を超えた場合、

年間保険料×保険料払込期間÷保険期間=損金扱の保険料

『保険期間は被保険者が116歳になるまでとする』と定められていますので、被保険者ごとに年齢、払込期間を計算して、保険料と前払保険料に計上していくという面倒な処理をしなければいけないうえに、当初損金計上できる保険料は少額になってしまいます。
数件あった契約のうち一部で保険料の支払が終了し、保険料支払総額が年間30万円以下となったときは、また、全額損金計上できるようになります。

 この設例では、1名30万円、役員・従業員あわせて10名で加入されたとした場合、1年目は300万円全額損金として処理できた保険料が2年目以降は1年目の300万円の大部分が保険料として損金処理できなくなるわけです。会社の経理に与える影響は大きなものになってしまいます。

第三分野保険の経理仕訳確認の重要性

 保険会社の設計書には法人契約の場合経理仕訳が掲載されていますが、第三分野の生命保険については、他の保険契約と合算して経理仕訳が決まるので、掲載をしていない保険会社も見られます。

 経理処理を事業年度ごとに確認しなければいけないので、令和元年(2019年)10月8日以後に第三分野の生命保険に加入される場合は、既に契約されている第三分野の保険についてもよく確認してみることをお勧めします。