相続税申告の中で大きな節税効果があるのが、「小規模宅地等の特例」です。
 その中でいわゆる「家なき子の特例」と言われるものと貸付事業用宅地に係る小規模宅地等の要件が改正になりました。
 平成30年(2018年)4月1日以後の相続開始から適用となります。

小規模宅地等の特例の概要

 『相続または遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始直前において被相続人等の事業または居住の用に供されていた宅地等のうち、限度面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価格の計算上80%または50%の割合を減額することができる(措置法69の4)』以上が小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の骨子です。

 小規模宅地の特例とは、亡くなった方が自宅として使用していた不動産については、配偶者か同居している親族が相続する場合には本来の評価額から80%OFFした金額で相続税の計算ができるものです。
 さらに亡くなった方に配偶者も同居している親族もいない場合には、別居している親族が一定の条件を満たせば、小規模宅地等の特例を受けることができます。これが「家なき子特例」です。
 高齢社会となった昨今こういったケースは今後増加していくと思われます。

家なき子特例の要件

【要件1】

 亡くなった方に配偶者も同居している親族もいないこと。つまり独居であったということです。ただし、相続人以外の人が同居していた場合には相続人はこの特例の適用が受けられます。

【要件2】

 相続する人が3年以上、自分または配偶者の持家に住んでいないこと。(持家を持っていても、住んでいなければOK)

【要件3】

 相続した人が相続発生日から10ヶ月以上所有すること。つまり、相続はしたがすぐに売却するような予定がある場合には特例の適用を受けない方がよいと思われます。

 

家なき子特例の改正点

 以下の2点で該当する場合には、家なき子特例の適用が除外されます。

 (1)相続開始前3年以内に、亡くなった方の3親等以内の親族又はその方と特別の関係がある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者。
 ▶つまり、あなたが持家を持っていなくても、あなたの親族が持っている家や経営している会社が持っている家(社宅等)に住んでいる場合を指します。
 
(2)相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者。
 ▶こちらは、昔あなたが所有していた家を、今は違う人が所有しているが、あなたに貸してくれてそこに住んでいるような場合です。「そんなレアケースある?」と思われるでしょうが、案外あるんです。

 

三親等

 上記(1)、(2)の今回の改正により下記ようなケースがこの特例の利用を実質的に封じられることになります。

  • 親族や親族が経営する法人の持つ不動産に住んでいる場合
  • 持家のない孫に亡くなった方の不動産を相続(遺贈)させる場合
  • 相続人が過去に購入した不動産を、相続人の子(亡くなった方からみたら孫)に贈与しておいた場合
  • 相続人が過去に購入した不動産を、亡くなった方に買取してもらっていた場合
  • 相続人が過去に購入した不動産を、親族関係者が経営する法人に買取させているような場合

 家なき子特例を利用した租税回避の申告例が後を絶たず、国税庁もこの改正で講じてきているわけです。ですが、経過措置もあります。平成30年(2018年)3月31日までに旧家なき子特例の条件を満たしている人の場合には、令和2年(2020年)3月31日までに発生した相続に限り、家なき子特例を認めますというものです。(平成30年(2018年)2月の税制改正法案より)

 とは言え、なかなか制度面だけでなく、納税者のモラルを問われる「特例」とも言えそうです。