保険金の受け取り漏れはありませんか?

 

 生命保険契約があるかを確認できる「生命保険契約照会制度」が令和3年(2021年)7月1日からスタートしました。生命保険の被保険者が亡くなられたとき、契約上の保険金受取人は保険金を自ら請求しなければもらえません。

 しかし、突然のことでどんな保険に入っていたかわからない、保険証券がみつからないというのはよくあることです。受取人はどこの保険会社に連絡したらいいのかわからないということになってしまいます。

 受取人が保険契約の存在に気付かなかったために、保険金の未払いが発生することが問題視されていました。

 これまでは、預金通帳からの保険料の引き落とし状況や、保険会社からの保険金の入金状況を調べたり、保険料控除証明書など保険会社から郵送されてくる文書を手がかりに探していましたが、生命保険協会が創設した『生命保険契約照会制度』を利用すれば、保険の存在が探しやすくなります。

【生命保険契約照会制度とは?】
契約者・被保険者が亡くなられた場合だけでなく、認知判断能力が低下している場合、災害時に死亡もしくは行方不明になられた場合に、生命保険協会に照会をすると、協会加入全42社に一括して調査依頼を行い、対象者に関する生命保険契約の有無を回答してくれるという制度です。

 亡くなられたときに照会申請ができるのは、
  法定相続人
  法定相続人の代理人等
 の方に限られます。

 照会申請には、
  本人確認書類
  法定相続情報一覧図
  死亡診断書等の写し
 がそれぞれ必要になります。
 原本は各保険会社での保険金請求に必要となる場合があるので、大切に保管しておいてください。

 1回の照会について税込みで3,000円の費用がかかります。(災害時には料金不要)

 

 詳細は生命保険協会のHPをご参照してください。生命保険契約があるかどうかの調査だけですので、保険金の請求は、生命保険契約のある保険会社へ直接連絡する必要があります。その際、「協会の生命保険契約照会制度を利用した旨」を申し出るとスムーズになるようです。

 ただし、協会に加入していない共済の契約(JA、コープ、県民共済等)や、据置保険契約(満期が来ても満期金を受け取らずに保険会社に預けたままになっている保険金)等は一括では照会できないので、これまでと同様、自分で照会する必要があるので注意して下さい。

 生命保険契約に漏れがないか確認するために、税理士事務所としてはこの制度の活用が望まれます。
 

 実際に当法人で複数の保険会社から保険金を受領している相続税の案件があったので、確認のために照会を行ってみました。

 申請を行う前に制度利用規約を確認してみると、第二条の第二項に代理人の範囲として、
『弁護士、司法書士その他照会対象者の財産管理を適切に行うために照会対象者にかかる生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと本会が認めた者』
 と明記されており、“その他照会対象者”の中に「税理士」や「公認会計士」は含まれているのかは不明でしたが、税理士を代理人とする照会申請を行うこととしました。

 まずは事前登録を行います。

 ホームページより申請者の氏名、生年月日、電話番号、メールアドレス等の情報を入力し送信します。初期登録完了のメールが届き、届いたメール内のリンクよりパスワードを登録して事前登録は完了しました。

 その後、ID(メールアドレス)パスワードを入力してログインします。ログインすると照会に必要な申請書、委任状などの書類をダウンロード・印刷できます。

 照会申請に必要な死亡診断書と相続人の戸籍謄本は、既に相続税の申告資料としてお預かりしていたので、印刷した委任状に必要事項を記入して頂き、本人確認書類(免許証等)を改めてお預かりし、それらをPDFファイルにまとめた後、申請用のホームページに添付をして申請完了です。

 しかし、申請後1週間ほど経った頃に書類に不備があるとメールにて連絡がありました。

 内容を精査すると、税理士は代理人に該当しないということでした。恐らく条文の「財産管理を適切に行うために・・・照会するにふさわしい」という点が、税理士はふさわしくないと判断されたのだろうと思います。

 今後の相続財産を調査するために非常に有効になりうる制度だと思いますが、肝心の税理士では代理人申請が出来ないという部分については非常に残念な結果でした。今後の改善を希望したいところです。

 上記の件で協会に電話でお問い合わせをさせていただきましたが、もちろん公認会計士も該当しないとのこと。では条文の「その他」にはどのような方が含まれるのかお聞きしたところ、「行政書士からの申請は受け付けている」というご回答をいただきました。

 そのため、当事務所からの代理人申請は断念し、再度相続人ご本人により申請をしていただきました。申請の内容は本人申請なので委任状が必要ないだけで、それ以外は全く同じ手順となっております。

 しかしながら申請後、再度不備ありとの連絡を受け、改めて内容を精査すると、添付した戸籍謄本、死亡診断書(A3用紙で左半分が死亡届、右半分が死亡診断書)の本籍地が消されていないためということでした。(申請当時は規約・ホームページ・申請用ホームページに注意書きの記載はありませんでした)

 そのため、再度本籍地が見えないように死亡診断書はA3の用紙を半分に折り、死亡診断書(右半分)のみをPDFファイルに仕上げ、戸籍謄本は本籍地の部分を黒塗りして再度申請をやり直しました。

 その後10日ほど経ち、ようやく受付が完了し、お支払い通知のメールが届きました。協会のホームページより再度ログインし、支払手続きを行います。

 支払方法はクレジットカード払い、またはコンビニ払いを選択できます。
 今回はコンビニ払いを希望しました。コンビニを事前に指定(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン等)し、ホームページより印刷したものをコンビニ内に設置されている端末で再度処理をして、端末から出力された用紙をレジに持っていきお支払いをします。

 受付完了から3週間ほど経って、「照会結果のお知らせのメールが届いた」と連絡があったので再度ホームページにログインすると、全42社の生命保険会社と被相続人の契約の有無が〇×で回答されているものが閲覧・印刷できるようになります。
 印刷したものを確認すると、1社だけ〇がついていました。依頼者である相続人は全て死亡保険金請求の手続きをしているつもりでいたようでしたので青天の霹靂であったようです。

 相続人の方は〇のついていた保険会社と契約を交わした記憶もなく、書類も見当たらない状況でした。一先ず該当する保険会社にお問い合わせをしていただき、確認をしていただくようお願いしました。

 しばらく待っていると保険会社より連絡がありました。頂いた回答は「被相続人が営んでいた事業の事業組合が運営している共済制度の引受会社が弊社であり、事業組合を経由して既に請求手続きも保険金のお支払いも完了しておりますので残っている契約はございません」という内容でした。それを聞いた途端に、“やっぱりそうか”となりました。

 結果的には、相続税の申告漏れになるような生命保険契約はないということが判明し胸を撫で下ろしました。ですが、2度もやり直しを行い、費用を負担して頂いた回答が間違ったものであったという何ともお粗末な結果でした。

 なぜこのようなご回答となったのか原因は定かではありませんが、せっかくの良い制度だと思いますので、一言・・・
「生命保険協会の皆様、提携している生命保険会社の皆様、もう少ししっかり運用と対応をしてください」
 というのが今回の感想です。皆様のご参考になれば幸いです。