コロナ禍 × 個人・法人設立

 

 いわゆる“コロナ禍”の時は、経済が縮小傾向にありました。
 その時『このまま個人事業でいくべきか、それとも法人を設立するべきか』と、迷っている事業主もいたのではないでしょうか。
 今回は法人設立のメリットとデメリットについて簡単に説明します。

法人設立のメリット

①信頼を得やすくなる
 法人の方が個人より、資本金や代表者の住所氏名、役員などの法律上必要な条件を満たした登記をしていることから対法人への信用を得やすくなります。

②節税ができる
 個人事業の所得税は累進課税であるため、所得が増えると税額が大きくなります。法人税の場合は800万円の線引きで税率が変わりますが、最大でも約23%程度。個人事業の場合課税所得が900万円超では33%、最高税率は45%から所定の税額控除が差し引かれます。年間所得が500万円を継続して超えるようであれば、所得税の他に事業税が課税され、場合によっては消費税の納税も視野に入れる必要がありますから、法人設立を検討する余地があると言えます。

③銀行融資・資金調達がしやすくなる
 個人事業の場合には個人と事業の線引きがあいまいなことが多く、融資の申し込みを行っても審査に時間がかかることが予想されます。法人の場合には、役員報酬として個人への支払は分離されていることや、財産管理(借入金や貸付金を含む)がされているため融資の審査は比較的早く判断されることが多いようです。

④決算月を自由に設定できる
 個人事業は、毎年(1月から12月)分を翌年の3月15日までに申告すること決まっており、申告時期の選択ができません。法人の場合には、繁忙期の申告を回避するなどの取引都合や役員の年間スケジュールの空き具合等を検討して設定できます。

⑤相続税の範囲を小さくできる
 個人事業の場合には、無限責任であることから事業を行うすべての財産債務が相続税の課税対象になります。法人の場合は有限責任になりますから、出資した株式(資本金)と個人からの貸付金・借入金等が相続税の課税対象になります。なお、株式の評価(株価)については、その時々の純資産の状況によって評価金額が大きくなることもあります。当初の出資した資本金の金額とは異なります。

⑥助成金や補助金・税制優遇の幅が広がる
 個人事業でももちろん助成金・補助金も税制優遇もありますが、同じ内容のものであっても、法人の場合には受け取れる金額が大きかったり、種類が多かったりと選べる幅が広くなります。

法人設立のデメリット

①赤字でも法人住民税がかかる
 個人事業の場合には、赤字であれば所得税は課されません。法人の場合には、法人が営業継続しているかぎり法人住民税(県・市町村)が課されます。(埼玉県の場合、最低20,000円、市町村で50,000円)

②社会保険の加入が義務となる
 法人であれば、会社の規模に関係なく社会保険の強制加入事業所となるため、加入する必要があります。個人で支払う国民健康保険・国民年金と比較すると納付すべき保険料は大きくなることが予想されます。法人で約1/2の負担をするので、従業員が多くなればそれに比例して保険料の法人負担額も増加していきます。加入や変更・退会の手続きや算定基礎届などの事務手続きが継続的に必要です。

③法人設立時・内容の変更時・解散や廃業等に費用がかかる
 設立時には資本金の用意・定款の作成・法人実印等の準備を行い登記する必要があります。登記は自分でも行えますが、法定費用(免許税や登記印紙等)だけでも20万前後の費用が必要となります。また、役員や住所地など一定の登記事項の変更を行う場合には、その都度登記が必要になります。株式会社の場合には最長10年で役員の変更登記を行う必要があります。なお、解散・廃業時には会社清算のための手続きと費用がかかります。

④決算の申告がやや難しくなる
 個人事業であれば、場合によりご自分で税務署へ出向いてその場での申告書作成も可能です。しかし、法人の申告となると所定の書類の作成が必要となるため、ご自分だけで申告することが難しくなってきます。専門家へ依頼すると申告報酬や顧問料を支払う必要が出てきます。

 法人の設立はメリットも多くなりますが、反対に義務や責任なども付いてきますので、そこのところはお忘れなく。